21歳52話
久しぶりの幼馴染との宴、アルコールも入らず宴もたけなわになってきたところで、自分となんぞうとで夜中にドライブをすることになった。行き先は不明、ただ飽きるまで東を目指した。住宅街を下り山沿いに東へ車は走り出した。自動車免許を取ってマニュアル操作もだいぶ慣れてきた。坂道での信号なんかは半クラだけで止まることはおちゃのこさいさい、下り坂もブレーキを踏まずギアを変えながら適切なスピードで走れる。それに加えてなんぞうとの会話がドライブを退屈から遠ざけてくれた。時刻は真夜中、すれ違う車のライトもそう多くない。国道を走り少し寂れた町から市の中心へ向かうと車の赤や黄色のランプが目まぐるしく行き交い少しばかり眩暈を覚えた。今日は華金、都会の浮足立った喧騒に身も心も飲まれていく。普段ニート生活の僕にとって強すぎる刺激だった。県庁前を通り過ぎた辺りで車を走らせてから20分は経過していた。「どこまで行く?」僕はなんぞうに問い掛けると、「動物園まで行って折り返そうぜ」と言った。往復一時間くらいか、悪くないドライブだな。目的のないドライブをしたのはこれが初めてではない。初めては思い出せなかったがとても緊張した事だけは覚えている。それ以来、なんぞうと車に乗るのは目的がある時だけだった。主にレンタルビデオ店だが二人はよく映画を借りに行ったものだった。車内がタバコの煙で充満するたびに窓を開けて外の空気を入れ替えていた。少し肌寒かったが浮つき興奮し顔が火照っていた自分にとってこの空気の入れ替えは気持ちの良いものだった、ウィンドウレギュレーターを少しずつ回すと窓上部から細い風が車のスピードと同期するように入っていき、徐々に太くなった風は顔、上半身へと打ち付けてくる。車内の煙が数秒もすると街の興奮、愉快な欲望と共に入れ替わり車外へ押し流されていった。この瞬間にしか味わえない気持ち、全身を貫くうわずった感覚はこの二人のドライブでしか味わえないものだった。動物園前まで着て一つ目の信号でUターンしようとしたその時だった。対向車線にパトカーが止まっていた、Uターンは禁止なのかどうか分からなかったが一か八かしてみせた。バックミラーでパトカーの動向を確かめると特に僕たちの車に対してアクションはなかった。時刻は深夜1時、なんぞうを家まで送り届けそのまま家に帰った。布団の上でしばらくタバコを吸いながらさっきまでのドライブは夢か幻かと少しの間落ち着かない様子だった。
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