19歳14話

 そういえば実習先で事件が2つあったと伝えたが、ここであともう1つ話しておこうと思う、1つはすでに書いてあるとおり僕が見た胃ろうをされた入居者の事だ。それはそれで自分にとって衝撃的で悲しい体験だったがあともう1つ、ある意味衝撃体験をしてしまった。結論から言うと実習中に暴力団の事務所に行ったことである。もちろん僕は暴力団員ではないし、暴力団とのつながりもない、ではなぜ19歳の学生が暴力団事務所に行ってしまったかと言うと実習先で暴力団員と付き合っている女性の介護職員がおり、その人と実習中に少し仲良くなって実習終わりに家まで車で送るよと誘われたのだ、まさかその後暴力団事務所に行くとは想像すらつかない。帰りの道程、暴力団員と付き合っている女性の介護職員さんが唐突に「私ヤクザと付き合ってるんだよね~」と最悪な言葉のボールをポンと投げてきた、いきなり何だよ!!頭の理解が全く追いつかないよ笑ヤクザというワードには流石に身体が反射的に反応し血の気が引いていく…マジで嫌な予感しかしなかったが予感は的中し、その女性は仕事終わりに僕の家ではなく暴力団事務所に寄るみたいで「〇〇(僕の名前)君も寄っていきなよ」という最悪のボールを2球目で投げてきよった…結果的になぜあの時この誘いを断れなかったのだろうと考えるとそれは恐らくリアルな暴力団という存在、その存在する団員とお付き合いしている人を前にした時、恐ろしくて断る勇気や力がまるでなかった、要はヘタレ??だった。女性のいう暴力団事務所が近づきどこに車を停めるんだろうと窓の外をキョロキョロする僕の眼前にバス停が現れそれまで流れていた風景がバス停でピタッと止まった。バス停前に停めた…流石暴力団員と付き合っているな!?!?と考えざるを得ない…バス停から歩いて2、3分だろうか?3階建てのいかにもな事務所が見え事務所に到着した、その時事務所の扉がとても分厚かったのを覚えている。中に入るとすぐに大きなリビングが広がっており隅の方で事務所の門番らしき人が大きなクリスタルガラスの灰皿を丁寧に清掃しており以外にもその手つきはとても上品だったのを覚えている。その他にチワワが事務所を走り回っていてそのチワワを介護職員の女性が楽しそうに追いかけ回している、僕は事務所入ってすぐの所でその光景を見ながらただ立つくしていると、走り回っているチワワが急に僕の方に飛びかかってきたのだ、僕は彼らに心象を良くするためチワワを無下にせずに「凄い可愛いですねぇぇ」と門番の組員に自分史上最高の作り笑いを全身全霊でお届けし、チワワを一生懸命モフモフした。事務所にはその時僕、介護職員の女性、門番の組員しかおらず。唯一の暴力団員の門番さんは丁寧に応対してくれた。その人と世間話は少ししたが緊張でその当時ですら何を話したのか全く覚えてなかった。事務所にいたのはどれくらいだったか?恐らく15分もいなかったと思う。介護職員の女性はやることがなくなったのか僕に「そろそろ家まで送るよ」とこの地獄のような状況にピリオドを打ってくれた。帰り道当然家は知られたくなかったので家から歩いて10分くらいの場所で「この辺が家なんで!!」と精一杯の声量で車から降ろして貰えた。家まで歩く間、開放感と同時に足の震えが来て、家までの道程フラフラになりながら10分以上かけて家に辿り着いた。めでたしめでたし…

竹内力シリーズ

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