18歳6話

 やっと施設実習が終わった。一抹の寂しさは全く感じず何ならスキップでもしながら家に帰りたい気分だ。ポータブルCDプレイヤーにイングヴェイ・マルムスティーンの音源を差し込みヘッドバンキングさせながら帰路に着いた。明日からは本格的な夏休み、特に予定はないが学校もなく宿題がないダラダラできる完全フリーの休みに解放感で胸が躍った。同時に自堕落を優先しようとする自分を見つけて少しがっかりもした。 

 入学してすぐ学校の帰り道で幼馴染にばったり出くわした、彼の名前は「なんぞう」幼稚園からの仲で小中学校まで一緒のおそらく後にも先にもこんなに気の合う人間はいないであろうというほど仲が良い。3年ぶりに出会ったなんぞうはタバコをふかせながら片手に缶ビールを持ちながらふらふらと歩いており、僕の顔を見た瞬間見られるとマズイかのようにタバコを水が流れる側溝に投げ捨てた。「よお~何してんの?」と挨拶するとなんぞうはにやけた顔で「予備校の帰りだよ」と言った。しゃーない、こっちから火をつけてやるか。僕は持っていたキャスターに火を着けてタバコを吸い始めた。するとなんぞうは嬉しそうな顔で「お前も吸うんだ!」と自分のタバコをポケットから取り出しタコのように口をすぼめタバコを吸い始めた。こいつはタバコの吸い方がキモい(笑)煙の吐き出し方もキモく、いつも煙で輪っかを作ろうとするのだが出来た試しがない。ふぉっふぉふぉっふぉと言いながら不細工な煙を吐き出しやがる(笑)それはおそらく今でもそうなんだと思う…ちなみにこいつのフェイバリット銘柄はマイセンと淡麗生、これだけは頑なに譲らなかった。仲の良い連れとはどんなたわいもない会話でも笑いが止まらん、なんでだろう。

 夏休みはこのなんぞうを介してのある種同窓会メンバーによる18歳恒例の日夜公園でただだべる行為が続いた。メンバーはなんぞうが集めた小学校時代のクラスメイト。毎日深夜から朝までたわいもない会話やたまに閉店間際のレンタルビデオ店に行きエロビデオを借りまくる、カラオケ、公園近くの頑固おやじが怒鳴り込んでくるぐらい騒いだメンバーによる花火大会。意味もなく朝までドライブ(速度制限40キロオーバーの根性試し)よく20歳前後の交通事故がニュースで報じられるが理解できる。運転手本人、周りの仲間、誰一人交通事故の怖さが分からないので若者の衝動にストップをかける人がいないのだ。                          自堕落とは思えなかったが大切な何かを無駄にしている感覚がした、矛盾しているが背徳感のようなどこかむずがゆい夏休みだった。

 『20年前に戻れるなら自分に言いたい、少しでも興味があるものなら やれ! 飽きてもいい、ものにならなくてもいい 手当たり次第にやれ!お前には興味のあるものがあっただろう』

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