過去の話

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まさゆめ

21歳50話 海の上に立つぐにゃぐにゃした大橋の上で何度もバウンドし身体が橋の外へ何度も投げ出されそうになるが辛うじて橋の中心からは逸れず時折り長い滞空時間ののちまた橋に打ち付けられ宙を舞った。身体はどこも痛くない。本人はこれが幻だと理解し...
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本格的な宴

21歳49話 真夜中、僕たちはとにかく騒いでいた。こんな楽しい日々が永遠に続くんじゃないのかと思うくらいに大声を上げて笑っていた。ビールにタバコ、おつまみ、音楽。なんぞうは酔っぱらいながらギターを弾き隣で寝ている両親の事なんか気にせずアンプ...
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喫茶店の前で

21歳48話 去年町の自転車屋さんからお洒落なカフェに改装された店の前で二人は最後の会話をしていた。彼女の家を出てカフェの前までたわいのない会話をしながら僕はゆっくりリトルカブを押して、彼女は肩に下げたトートバッグの持ち手を両手で握りしめな...
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風邪なのよね

21歳47話 ハワイからの帰国中、飛行機の中で寝違えてしまった。エコノミークラスで約8時間のフライトはなかなかに身体に負担がかかる、そして飛行機の中で悪寒がして、あっこれはやっちまったなと思った。案の定帰国して次の日に風邪を引いてしまった。...
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アロハ

21歳46話年が明け二月が終わろうとする頃、僕はホノルル国際空港に家族と降り立っていた。空港に降り立つと真っ先に喫煙所を探しロングピースを咥えながらその他大勢いる日本人観光客と一緒に一服していた。飛行機に乗っていた乗客全員が喫煙者ではないか...
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最後のクリスマス

21歳45話 彼女との最後のクリスマス。二人で話し合い別れることを決めた。彼女は僕が語学留学するなら別れることは当然という立場でそれは当然だと僕は思った。しかし当の本人である僕ときたら語学留学なんて正直かなりぼんやりしていて、25歳くらいま...
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鏡の前

21歳44話 殺されることを考えれば自傷行為なんて大したことじゃない。脱衣場の鏡の前で真っ赤な網の目状の傷跡を見ながら落ち着くことない心と無気力な人生を生きている自分が少々可哀そうな気もしてくる。頭の中で蜷局を巻いた怪物はまだしばらくそこに...
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自分の顛末

21歳43話 あの時観てしまった動画の衝撃が今だ身体を不安にさせ、でも何故か自分の中の何かを活発にさせた。生きなきゃという衝動と生の脆さをハッキリと見せつけられたこと。表裏一体、生の顔から死の顔に回転扉のように変わる様を。次の日からこの感覚...
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モニターの向こう側

21歳42話 最悪の結末になった例の武装勢力人質事件。事件から一か月経った頃、弟から恐ろしい情報が伝えられた。大学から帰宅してきた弟から「人質事件の殺害動画がインターネットに上がってるらしいで~」と廊下ですれ違いざまに無邪気に告げられたが、...
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中東

21歳41話 毎日毎日イラク戦争のニュース、テレビに映し出されるのは米軍がライフル片手に瓦礫と化したバグダッドの街を闊歩している映像ばかり。戦争がいつ始まったのかも、いつ終わるのかも分からない。イラク戦争(イラクせんそう)とは、アメリカ合衆...