アラーム音よ鳴れ!!

20歳37話

 バイト中そわそわして落ち着かない、僕は指定された時間に鳴る携帯のアラーム音を待っていた。あと9時間後、あと5時間後、あと1時間後…。バイトが終わりレジ締めをしている最中、「そろそろ鳴る時間なんだけど…鳴らないな…」店の片付けをしている最中も鳴る気配がない…僕は携帯に打ち込んだ退職記念アラーム音を待っていた。バイト最終日に流れる今までの楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かった事、全てを喝采してくれるファンファーレを…しかしアラーム音は結局鳴らず、僕はポケットから携帯を取り出し携帯内のカレンダーのその日の設定画面を確認した。‹アラーム音—–OFF› バイト最終日に携帯のファンファーレを聴きながら少しステップを踏んでみたりして小躍りするつもりだったはずだが、まあいいか…音が鳴らなくても客が帰り店内で一人になった僕は少しの解放感と充実感、名残惜しい気持ち、色々な気持ちの感傷に浸りながら個人的なイベントを失敗してもなおバイト生活からの解放を思うとそれを甘んじて受け入れた…閉店後店にある以前から気になっていたある映画を借りた。この映画は後日バイト先に返せばいいと思ってVHSをカバンに入れて店を後にした。

 フローリングに敷かれた布団、洗ってない枕、枕元に置かれたPS2と14型のブラウン管テレビと灰皿。電気を付けた自室に入り布団の上にVHSが入ったカバンを置きあぐらをかいてホッと一息ついた。もうバイトに行かなくてもいい。決められた時間に何かをしなくていい。この先やらなきゃいけない事はあるのかもしれない。この先何かをしているに違いない。でもそれは今じゃない。今したい事は眠れるだけ眠ること、小さい頃から出来なかった事だ。小さい頃から熟睡というものをいまいち理解出来なかったが、今ならそれを出来る環境にある。心配事は何もない。そう思えるだけで安心し自分の欲求に好きなだけ応えられる。借りてきた映画を観ている時も映画が良いからではなくて今の自分のこの身分が楽しいからで、今の自分なら何を観ても楽しいのだろう。その日はぶっ通しで12時間以上眠りにつき、朝起きた時安らぎが全身に満ち渡るような感覚がしたのは生まれて初めてで、まさに熟睡と言えるものだった。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ブログ書きましょう!!↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

過去の話
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ねこのはいかいをフォローする
タイトルとURLをコピーしました