
20歳36話
夜気が優しい春先の21時頃、久し振りの幼馴染との集まりがあり、家から歩いて10分位の住宅街入り口でなんぞうとジィー君を待っていた。5分もするとまずなんぞうが現れ、二人でタバコを吸っているとバイト終わりのジィー君がパンパンになったボストンバッグを斜めに掛けてこちらへやって来た。いつもは二人が家まで来てくれるが、今日は宴の酒を買おうという事で三人でコンビニまで行くことにし、住宅街の入り口からコンビニまで曲がりくねった坂を歩きコンビニの看板がちらりと見えたところで僕は不意にジィー君の顔を見ながら「俺学校辞めたんだよ」と言った。ジィー君はびっくりした表情で「マジで!」とどこか嬉しそうな顔も見せながら目を見開き僕の方を見ている。なぜジィー君にその事を言ったのかというと、フリーターであったジィー君と仲間意識を共有したかったから。言い方は悪いが学校を辞めただのフリーターの身分に落ちた気持ちを共有できるのはジィー君だけだったから。ジィー君は色々声を掛けてくれフリーター同士の慰め合いも今の僕には温かかった。
授業料を二年分親に払ってもらっていたので20歳の春までは学校に籍はあり一応形としては学生の身分だったが、新学期が始まり僕は正式に退学となった。この日まで僕は社会の中で学校という物に属していて形だけでも自分自身が社会の中に確かにいた。二年目の学校はほとんど行かず何もしていなかったけど学生という肩書があるだけで社会的に自分を肯定出来ていた。が、とうとうこの日が来てしまった…ただのフリーター、退学というメンタルが参っていたとはいえ自分自身逃げ出した感は否めない。学生時代、日々の時間は授業や遊びで埋め尽くされ時間の感覚というか時間そのものに対して何も思わず何も感じなかった。ジィー君に晴れて学校を辞めた事を伝え、コンビニまで歩く道すがら急に目の前に先の見えないほどの長く幅の広い道とそれにかかる巨大な曇りがかったもやが突然現れた。可能性でもなく未来でもなく希望でもない、その時は理解できなかったが、突然現れたそれは『時間』というものだった。
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