ガラケーのカレンダーに『おつかれさん』

20歳35話

 四月ぐらいだろうか。バイトのない平日何の用事か忘れたが家から駅へ向かう途中携帯が鳴り出ると店長からで「来週の勤務から一人でいける?」と急に言われた。僕は「一人でですか…⁉⁉」と、とてもじゃないが承服しかねる雰囲気を声のトーンでことさら店長に見せつけた。店長はこの展開を読んでいたのか、すかさずこの条件を飲めば時給を上げると言ってきた。「どうですかねぇ~」僕が入っていた曜日は金土日の勤務で特に金曜日と土曜日はめちゃくちゃ忙しい。それをワンオペで回す事を想像すると安易に「はい」とは言えない。かといって店長の頼みも断れず、何より人からの頼み事を基本断れない性格だ。何か頼まれごとがあるたびにこんな自分の性格が毎度嫌になる。結局は拒否したい気持ちが店長の思い付きのシフト構想に簡単に流され要求を呑んだ…

 ワンオペ勤務が始まったのだが、汗が止まらない。特に金曜日はお客さんが多く20秒に一回は接客し、高校の時に部活でやったシャトルランを思い出した。そうこうしているうちに気付けばもう夜の8時…少し暇になったところを見計らってタバコを一服…夜の9時過ぎからまたお客さんが津波のように来店しそれに飲まれないように必死で客を捌き切りながら暇になってくる深夜1時までなんとか耐えきった…金曜日といえどこの時間まで来るともうお客もほとんど来ない。身体に疲労感と充実感が襲ってきて目の前がいつもよりチカチカしてくる。閉店後シャッターを閉めて僕以外誰もいない店内でレジ締めをしていた時、なんとも言えない開放感とこの店を統べるような支配感に包まれワンオペの対価としていつもより+3000円多い日当をレジから抜き取り店を閉めた。

 いつも仲の良い同僚との勤務もそれ以来なくなり、お喋りをしながらだらだらと接客する日々は消えてしまい、僕は一人接客マシーンとなり毎週働くようになった。一人で抱える仕事量が明らかに多くなり、防犯への不安、接客しながらのクレーム対応、時折りかかってくるオーナーからの無茶振りな指示、けつもちを要求してくる怖いオジサン達。気付けばバイト中、携帯のカレンダーを開き6月最後の日曜日に『おつかれさん』と打ち込んでいる自分がいた。

↓↓↓↓↓↓↓↓ブログ書こうぜ↓↓↓↓↓↓

過去の話
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ねこのはいかいをフォローする
タイトルとURLをコピーしました