
20歳32話
最近バイトの出勤途中に銀行に寄ることが多くなった。何の事はない店長から硬貨の両替を頼まれたのだ。なんで僕がこんなことをしないといけないのかと少しは思ったが、バイト先は店自体が何に対してもルーズでまずシフト表が存在しないし、給料は毎日手渡し、もしくは自分でレジ締めの時に勝手に取る。千円札がなくなると店長がパチンコ屋に両替しに行きそのままスロットをして帰ってくる(勝った時は少しばかりのお心遣いを賜った)店員によっては客からの値下げ交渉をオーナーの許可なく快く応じていた。ある時期から店長や同僚がレジ締めの時にその日の売り上げをくすねだしたがオーナーは全く気付かない。その理由は会計の時に客の支払ったお金をレジに打ち込まずそのままレジにプールしておく、ある程度くすねたいお金を計算し最後プールしていたお金を懐に入れる算段だ。レジに打ち込まれたその日の売り上げと実際にレジに入っているお金の差額が裏金になるという事。帳簿なんてものはなくやりたい放題していた。そしてレジに向けられた防犯カメラがダミーであった事は周知の事実だった。僕はオーナーが実はただのオーナーではないことを知っていたのでそんなことはしなかったが、案の定、後で店長をはじめ何人かの同僚が検挙されつるし上げられたのだった…(汗)
業務で分からないことが少なくなりむしろ教える側にまわって、同僚に指示を出してレジ裏にある狭い休憩室でタバコを吸いながらもう半年がたったのか~と煙をくゆらしていた。半年以上たった…バイトをしていてお客さん含め色んな人に会っな。鍋さんをはじめ、正社員をしながら会社に隠して夜だけバイトに来る人。転職活動中に働きに来る人。完全フリーターの週6日で働いている人。車で二時間かけて五時間だけ働きに来る人(車を道路に停めていつも警察に切符を切られていた)店が近かっただけで来る人。某大手上場企業で営業部長をしていた人。彼の性癖が喫茶店で女性がトイレに入るとその後すぐにトイレに駆け込むという顔とやることが解釈一致のおじさん(始末書の存在とその書き方をいつも教えてくれた)個人的に凄いなと思ったのがバイトを何個も掛け持ちしている人だった。
最近バイト終わりにバイト先の近くにあるTSUTAYAに寄ることが多くなった。理由はバイトに慣れていない時は業務が終わると疲れてすぐにでも家に帰りゆっくり休みたかったが、だんだんと業務になれてくると心身共にゆとりが出てくる。するとバイトが終わってもただ家に帰るだけではどこか物寂しさを覚え体は勝手に人が集まるコンビニや深夜でも営業しているTSUTAYAに向かっていた。その日TSUTAYAに入り音楽コーナーへ向かった。バイトが日当手渡しという事もありついついCDやDVDを買ってしまう。いつも3000円くらいする国内版の洋楽を買うのだが、たまにはDVDを買ってみよ上と棚を漁りだした。ターコイズ色のタイトルとアーティスト名、薄いオレンジ色をした渦巻模様の上に開かれたドアからメンバー四人が張り付けられた雑なパッケージに魅かれ、手に取った瞬間身体に何か衝動を起こしそのまま購入していた。改めて雑でブートレグみたいなデザインのこのDVDを持ち帰り早速視聴したのだが、最初のBGMから一気に持っていかれ一発目のベースの音でやられてしまった。基本メタルが好きだったのだが、雑でフリーフォームでサイケな音がしっかりとハードロック化されるとそれはそれでめちゃくちゃいい!!演奏者から劣情が溢れていて画面越しにこちらに飛び散ってくる。ファンクとかサイケとか70’ロックとか色んなジャンルに対して偏見があったが、このDVDを観て音楽に対して細かいことはどうでもよく、良いか悪いか、おもしろいか、おもしろくないかで判断するようになった。
