
20歳27話
自分の机の上に留学サポートセンターから貰った資料が無造作に置かれている。僕はそれを眺めながらホッとし、何かやり遂げた後のような満足感と安心感にしばし浸っていた。何をやり遂げたかというとこの何もない人生で何かをしたことだ。人生に空白があることをいつも気にしていた自分がその強迫観念にやられた結果イギリス留学という突拍子もない処方箋…来るべき未来には確かなイメージは出来るものの今している事にはぼんやりして実感も何もない。と言うか、今日が何月、何日、何曜日かも分からない。 どうやら自分が二人いてそれぞれの役割があるらしい、一人は人生を何かやっている人、もう一人が人生に悩みはするものの、ぐうたらが何よりの快楽だと知ってそれを日夜楽しんでいる人に分かれている。意識でそれを認知しようとすると、理性は前者を支持し身体はハッキリと後者を支持した。今僕の身体は正直に言うと怠けたい、だらだらとしたがっている。理性はお飾りで怠惰な自分を弁護してくれる人に過ぎない、だけどどれだけ人生に埋没しても素敵な未来が来るといつも耳打ちしてくれるし、それを聞くと何の疑いもなく安心した。深夜番組を観ながら留学サポートセンターに行った事実を取り敢えず忘れ、またいつもの昼夜逆転生活に入る安堵感、遠出してまで行った任務によって軸がブレそうだった生活を死守出来て少しの達成感さえ覚えた。
