深夜番組とチキンラーメン

20歳24話

2003年がもうすぐ終わろうとしている、学校退学後(厳密には二年分の学費を払ってもらっているので在学している期間は2004年まで)僕の生活は明らかに昼夜逆転をし始めて起きている時間が昼から夜に知らず知らずのうちに移って行った。夜の十時過ぎ僕は今一階16畳程あるリビングの石油ストーブ前で祖父がたまに使う高さ5.60センチ、横1メートル程度のすのこ椅子に灰皿替わりのでかいマグカップを置き石油ストーブ横のテレビをボーっと観ていた。まだ起床してから六時間位しか経っておらず家族がそれぞれ寝室に行ったのを見計らって自分の部屋からのそのそとリビングまで降りてきた。テレビはゴールデン帯が終わり各テレビ局はその日のニュース番組に切り替わって時事放送を始めている。僕はスポーツコーナーが始まるまでタバコを一本二本と吸い続けその日あったニュースを無関心に眺めていた。

 週末深夜帯のバイト、昼夜逆転してきた生活で家族との絡みがなくなってきた僕にとってテレビは家族に代わるある種良い意味での生活雑音であった。家族に挨拶すること、されること、自分以外の家族同士のたわいない会話、生活音などの当たり前にあった日常をテレビに求めていた。元々一人が好きな人間ではあるが起床したものの一人で静かにタバコを自分の部屋で吸うにしてもどこか心もとなく少し寂しく(友達が遊びに来てくれる日以外は夜10時までは自室に閉じこもりテレビゲーム等をしていた)時間が経てば腹は減り昼食兼夕食のための食材がある一階に行くことは起床してから自然な流れだった。このあたりからだろうか、ニート生活約5年の雑音欲を満たしてくれるお供がテレビさんであった。いつも昼食兼夕食のルーティンはスポーツコーナーを観ながらやったこともないスポーツで活躍してる選手に自分を投影しそのまま興奮状態でチキンラーメンを食べるというものだった。スポーツコーナー後にキッチンへ向かっていき食器棚にある色々なインスタントラーメンを漁り手軽に作れるチキンラーメンを選び鉢にセットして熱湯を注ぎそのまますのこ椅子に運んでラーメンが出来上がるまでしばらくテレビを眺めていると徐々に身体が目覚め始めるのだ。起床後6時間は経つがその間に目が覚めているかと言われればそうもない、起きる時間帯はまだ日は照っているし家族も動いている(家に居るのは祖母と祖父のみ)雑音が欲しいと言ったがこちらは学校を辞めたただのフリーターという事もあり社会に、何より家族に対して引け目に感じていてリアルな家族の生活音はなかなか辛く拒否反応があった。そんな時間帯を一人タバコを吸いながら意識的に逃げるようにテレビゲームに費やしていた。そんな感覚が完全に開放されるのが夜10時過ぎなのでそこから本当の覚醒が始まるのであった。学生生活どころか子供の頃からほとんど観てこなかった深夜番組の世界を見せてくれたテレビさん。僕にとってのゴールデン帯は大体0時過ぎた辺りからでその時間になるといわゆる深夜向けのバラエティー番組が各局こぞって放送し始めるところでまたテレビはまた賑わいを取り戻していた。深夜番組の好きなところは基本的に放送時間が短く大体の番組は30分で終わることだ。その他に挑戦的な企画が多いのもその理由だった。30分テンションが高いまま終わっていくものもあれば実験的過ぎてともすればローテンションのままフェードアウトする番組もある。観ているようで観ていない…雑音の事でも触れたが特定の好きな番組はあっても基本テレビをザッピングしながら観るのが僕のやり方で身の周りがどこか騒がしければいいのだ(今で例えるならユーチューブのショート動画を観るような感覚)いつもそんな付き合いをテレビとしていて、たまにサッカー日本代表がヨーロッパ遠征、アンダー世代の国際大会が深夜放送されていると味変の様にバラエティー番組以上にしっかり観ていたと思う。基本的に観ていたジャンルはこの二つ。あと月一でやっていた朝まで生テレビ(内容は僕にとってはチンプンカンプン)ぐらいだろうか。好きで観ていた番組がゴールデン昇格するとなんだか感慨深いものがあったなぁ~。そんな昼夜逆転生活の一日の終わりと言えば各局バラエティー番組が出尽くしてそこから深夜ニュース番組、テレビショッピングとテレビのチャンネルを切り替えても賑わいが少なくなってくると決まって僕は深夜どこかの高速道路を定点カメラで映す映像にふらっと辿り着くのである。大量のニコチンによりフラフラする頭とテレビの観過ぎでチカチカする目をこすってもうすぐ来る睡魔を待ちながらタバコの煙で一杯になったリビングを後にするのだった。2003年から2008年位までに放送されていた深夜バラエティー番組はほぼ観ていて、サッカー日本代表に関しては深夜生放送されていたものは全て観ていた自信があるぞ。

過去の話
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