
20歳22話
10月を過ぎた辺りだろうか、バイトがない平日夜に幼馴染達と僕の家で集まることが多くなった。集まるのは僕を入れて三人、メンバーはなんぞうとジィー君(小学二年生の時に同じクラスになってからの友達)でこの三人は仲がいい事と家が近いという理由で自然と集まることが多くなりお互い暇な時間を埋めるように気楽で気心知れた者同士で和気あいあいと集う時間が増えていった(なんぞうは週に1回、ジィー君は2週間に1回の頻度)集まるのは夜10時を過ぎた辺りでいつもなんぞうが一番乗りでその30分後位にジィー君が来る流れでなんぞうはいつも発泡酒5.6本と酒の肴を手にジィー君は最近聴いてるお気に入りのCDを持ってふらっと来てくれた。家でやることは酒やタバコを飲みながら音楽を聴いてただだべるだけだがたまに三人の深夜テンションが極まると部屋にあったラジカセのマイク録音機能を使って即興演奏を録り溜めていくルーティンが始まった。僕の部屋には中学生の時に買ったエレキギターとマルチエフェクター、アンプがあり(買ってからあまり触っていなかった)音を出す環境はあったし音楽を聴きながら酒が回れば自然とそういう流れになっていった。各楽器のパートはなんぞうがギター、ジィー君はヴォーカル、僕はパーカッション担当。演奏はというとなんぞうのへたるギター、金属製のゴミ箱をひっくり返したゴミ箱の底をこれまた何故か家にあった木琴を叩くバチから弾き出す不規則で甲高い金属音、英語なのか日本語なのか分からない独自に編み出した言語(ホントは流暢な英語で歌いたかったんだと思う)で歌ってくれるジィー君から醸し出す謎の無国籍感溢れるブルージーなヴォーカル達がまさぐりあい、いつも三人の調子が良し悪し関係なくどう転んでもインダストリアル音楽になってしまうが即席スリーピースバンドから放たれる実験的で先鋭的な音楽性は当時世界の音楽シーンでも最先端を走っていたとかなり本気で今も思っている。そしてかなりの爆音で演奏していたのにも関わらず隣の部屋で両親は毎日よく眠れていたもんだなと今になってよく思う。その他にも泥酔した状態で夜いきなり彼女に電話してダルがらみしたこともある。演奏後は三人共々気分が良くなってだいたい深夜近所の公園まで徘徊し園内で騒いでしまい近所の人に通報されカブに乗って来たお巡りさんに注意を受けるのがおちであった。
