
21歳47話
ハワイからの帰国中、飛行機の中で寝違えてしまった。エコノミークラスで約8時間のフライトはなかなかに身体に負担がかかる、そして飛行機の中で悪寒がして、あっこれはやっちまったなと思った。案の定帰国して次の日に風邪を引いてしまった。日本に帰って来て鼻水を垂らしながら彼女にお土産を渡しに行った。彼女は買ってきたアロマキャンドルをとても気に入ってくれて満面の笑顔を見せてくれた。僕が試しにアロマキャンドルの一つに火を着けてみようと提案をしたが彼女は断固拒否した。アロマキャンドルがなくなるのが嫌だったのだろうか?それとも火を着けなくても本体から若干香るトロピカルな匂いで十分だったのだろうか?彼女はアロマキャンドルに火を着けることを頑なに拒んだ。
あと二か月足らずで彼女は卒業してしまう。それはすなわち僕と彼女との別れが迫っている事だった。彼女との別れに寂しいというより虚しさが心を覆った。今の僕にとってどんな出会い、どんな出来事、どんな心情の変化だって虚無感しか湧かない、自分の人生の座標と社会の座標、それぞれは交わることなく僕自身の点は動こうともしないし目標のために行動も移そうともしない。かすり傷さえ負っていない、向かい風も追い風も感じていない僕に何の感情があるのだろうか?自分が今している事、やろうとしている事はまるで畳の上で這いずり回っているチャタテ虫のようじゃないか。どうせ今日も寝たいだけ眠るんだろう?留学という目標をでっち上げているだけだろう?毎日好きなだけタバコを吸って家族に用意してもらったご飯を食べ、洗濯物を足の悪い祖母にしてもらっているんだろう?社会に出たくないんだろう?人生を始めたくないんだろう?こんな生活が許されるのなら心情的にはずっと続けたいというのが本心だった。 彼女はすでに目星の就職先を何社か見つけ面接に行くみたいだ。彼女の目は清らかで希望に満ちていた。
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