新社会人ニート

22歳61話

 僕は玄関にある便所スリッパを履いて家を出た。うららかな春の日差しを浴びながら歩くこと五分、近所の公園に行きいつも座っているベンチに腰掛けた。公園には大きな桜の木が4樹ぐらいあってどれも桜の花が満開に咲き誇っている。時折り吹く春の嵐で花弁が空高く舞い上がっていた。火が点いたタバコの先になんぞうが缶ビール片手に歩いてくるのが見える。社会人として一年目を迎えたのにもかかわらず緊張感もどこへやら昼間から開放感でいっぱいだった。「なぁ、社会人になったで」 「どういう意味?」 「今年23になる歳や」 「そういう意味か、なるほどな…」 「お前はあと何年大学に行くん?」 「分からん、浪人してるから留年はできへんな」 「もうすでに留年決定してるやんけ」 「それはそうと今からお前の家行ってええ?」 「ええで、その前にコンビニ行かせてくれ」 

 ビールを大量に入れたコンビニ袋が指の先に食い込んで痛い痛い。なんぞうの家の玄関入ってすぐの花壇にはかつてなんぞうが飼っていた雑種の犬の墓があって犬が死んだ時にその花壇に埋めたらしい。埋めた所だけ土が若干盛り上がっている。家に入るとさっそくムカデがおで迎えしてくれそそくさと二人は2階のなんぞうの部屋に上がり込んだ。部屋はタバコの匂いと酒の匂いが充満している。机の上には大学受験の時の赤本、その他にも歴史の教科書、現代文の教科書、英語、ノートが机一杯高さは30センチ均等にそれぞれに積み上げられていた。その足元には見せつけるかのようにビールの空き缶がぱっと見30本~40本は整然と置かれてあった。でもまぁ見慣れた景色や。たまり場は僕だけの家ではなかって、なんぞうの家でもよく溜まっていた。初めて来たときに、沢山CDが聴けたこと、小説がそこそこあった事、初めてロートレアモンという詩人を知って詩がこんなにも感動するんやと思った。吉行淳之介の小説もここで借りパチしている。なんぞうが選曲する音楽は最初はジャズ(大体チャーリーパーカー)そのあと60年代のニューヨークのロックとか、、、毎週タワーレコードに通っているらしく来るたびに新しい音楽に出会えた。夕方頃タバコの吸い過ぎで頭が痛くなりそろそろ帰るわとベロベロになったなんぞうに別れを告げて新社会人ニートとしての1日が終わった。

【これからは書き言葉を普段の方言で使うようにします】

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